部分矯正1本から数本の移動
例えば、前歯が1本だけ引っ込んでしまっていて、審美的にも問題があり、かつ清掃もしづらい状態の歯を矯正することで、見た目を良くして歯を磨きやすい状態に回復します。
この時に部分矯正でなく、歯に被せ物をして、見た目だけを治した場合は、もともとの歯の位置は引っ込んだ状態ですので、清掃面で問題が生じます。
具体的にはその部位の歯肉に炎症が起きやすくなり、場合によっては口臭の原因にもなります。また、歯周病で前歯に隙間が出来てしまった場合も、部分矯正によって歯を移動させ、隙間を埋めることができます。
もちろん、歯周病の治療は必要ですが、歯周病の治療だけだと前歯の隙間や歯並びは元のように回復するのは困難です。
子供でも部分矯正
さらに部分矯正は大人だけでなく、子供にも有効です。
例えば子供の永久歯の犬歯が埋伏していて、生えてこれない状態のお子さんが時々いらっしゃいます。この時に歯科口腔外科医とタイアップして開窓手術と部分矯正をすることで、正常な位置に歯を誘導して生えさせることができるのです。
【参考】
大阪大学歯学部付属病院
https://hospital.dent.osaka-u.ac.jp/diseases/diseases_000088.html
子供にとってはまさにその時期に開窓して正しい位置に歯を誘導できなければ、生涯、大切な歯が埋まったままの状態になり、成長後の審美面にも大きな影響をもたらします。
一般的に矯正治療と言うと、時間とお金がかかるイメージがあるかもしれませんが、ほとんどの部分治療は一般の矯正治療よりも短時間で終わりますし、金額的にも低いと思います。
いい事づくめのようですが、すべてのケースで部分矯正が出来るわけではありませんので、ご注意ください。
大人の場合は、咬合が安定していない場合や、全体の歯並びに問題がある場合、重度の歯周病がある場合などは部分矯正は適応外です。そうした場合は本格的な矯正が必要だったり、部分矯正以前の問題として、口腔内の健康を回復させる必要があります。
子供の場合は、埋伏歯などは部分矯正で治せても、成長や習癖を考えた場合には、合わせて子供の矯正治療が必要になることもあります。
部分矯正に限りませんが歯の治療は総合的な診断の元に、ひとつひとつの治療方法が選択されますので、担当の歯科医師に口腔全体の説明を良く聞いた上で、治療を進めるかどうか、ご判断頂くのがよろしいかと思います。
【参考】
日本矯正歯科学会
http://www.jos.gr.jp
矯正装置装着後の注意点
矯正装置をつけた後のお食事や歯磨きそして痛みについて不安な方も多いと思います。詳しくは矯正歯科医、あるいはかかりつけの歯科医師や歯科衛生士にご相談ください。ここでは一般的なことについて書いていきます。歯磨き器具がついていると、通常よりも歯磨きが上手くできずに、むし歯や歯肉炎になってしまうリスクが高くなりますので、子供の場合は、保護者の方も一緒に歯磨き方法を教えてもらう方がいいと思います。
痛みが出たら
お口の中に矯正装置が入り、歯が動き始めると痛みを感じます。痛みは個人差がありますが、普通は3日から1週間くらいでおさまってきます。
ここでは痛みがでた時の対処法をいくつかお伝えします。
①塩湯を口に含んだり、歯肉を指でマッサージすると歯根の周りの血液の流れが良くなり楽になります。
②我慢できない時は痛みどめを飲みましょう。
③痛みがある時のお食事は柔らかいものにしましょう。
④装置が唇や頬にあたって痛い時は、歯科医院で渡されたワックスがあれば、それを使いましょう。それでも痛い時は歯科医院に連絡をしましょう。
お食事について
①りんごやおせんべいや硬い生野菜の丸かじりは避けましょう。
②歯につきやすいガムやキャラメルは食べないでください。
③カレーなどのお食事をした場合は食べてすぐに歯磨きをしましょう。装置に色がつく場合があります。
歯磨きについて
咬む面の磨き方は、歯ブラシを平行にあてて、一番奥の歯から前後に動かして磨きます。
前歯の表面は歯ブラシを斜めに押しあてて横に振動させます。
磨きにくいところはインターデンタルブラシを活用すると良いです。
金具がついているところは汚れが残りやすいので、しっかり磨きましょう。